神戸市住宅都市局 企画調整局 インタビュー

人が主役になれるまちづくりを進める「神戸市役所住宅都市局・企画調整局」

神戸の一大繁華街・交通網ターミナルの中心都市である「三宮」。この「三宮」が大きく変わろうとしている。2015(平成27)年9月に策定された三宮周辺地区の「再整備基本構想」が神戸市主導によって進められている。概ね30年を見据えた大がかりな段階的整備は完成すると、“人を中心とした”都市になることが期待されている。そんな新しい神戸の未来の姿について、神戸市住宅都市局計画部都心三宮整備課都心企画係の菅原係長と神戸市企画調整局政策企画部調整課都市プロモーション担当の平井係長にお話を伺った。

震災再生から新たな出発点に立つ神戸

都心企画係の菅原係長と都市プロモーション担当の平井係長
都心企画係の菅原係長と都市プロモーション担当の平井係長

――三宮の再整備構想が策定されたということですが、まずはその概要から伺わせていただけないでしょうか。

菅原さん:神戸市は震災から今年で22年が経過しました。その間、厳しい財政状況のなか、まちを元通りに戻していくことに力点を置いてきたため、都心部は長く変わっていない状況でした。ですが、財政的にも一定の目途が立ってきたこともあり、2015(平成27)年9月に市民の皆様と目指すべきまちの姿を共有していこうと考え、神戸の都心の未来の姿[将来ビジョン]と三宮周辺地区の「再整備基本構想」を作成しました。

神戸港エリア
神戸港エリア

いろんな方の意見を聞くことが重要だという思いから、市民の皆様からの意見募集やワークショップを重ねながら構想を作っていきました。その中で一番のキーになったのが、“神戸のまちは人の力によって復興してきた”“神戸が好きな人が多い”という意見が多く、これからの神戸の未来を考えるうえでも“人の視点”を大切にしていかなければいけないという思いから「人が主役になれる、まちづくり」ということをベースに置いています。再整備基本構想は、「三宮」駅を中心として半径500m程度の範囲が対象で、概ね30年後を見据えた段階的な再整備になります。将来ビジョンは「3つの柱と8つの軸」という大きなテーマから構想が練られています。

「人」を中心に考えると、新しい未来の答えが見えてくる

3つの柱と8つの軸
3つの柱と8つの軸

――では、最初に「3つの柱」の部分から伺わせてください。

菅原さん:「3つの柱」という部分は、1つ目が「心地良いデザイン」、2つ目は「出会い、イノベーション、そして文化」、3つ目は「しなやかで強いインフラ」です。その3つの柱を意識して、どんなものが都市に必要なのかということを市民の皆様から頂いた意見などからまとめたところ、8つの軸というものができあがりました。

――「8つの軸」についても教えていただけますか。

菅原さん:「8つの軸」は、1.景観 2.にぎわい 3.生活・居住 4.産業 5.観光・文化 6.防災 7.環境・エネルギー 8.交通ということになります。

1の『景観』は「あちこちで神戸を感じられるまちへ」ということで、例えば、旧居留地であれば旧居留地らしく、ハーバーランドであればハーバーランドらしい、それぞれの地域にあった神戸らしい景観を作っていこうというものです。

2の『にぎわい』は「次々と新しい人が訪れ、新たな出会いが生まれるまちへ」ということで、神戸市が管理する道路や広場を工夫してもっと楽しめる、にぎわいのある空間にしていけると考えています。道路空間を車から人へ再配分するということが、すでに実施されているところもあります。また東遊園地では、土のグラウンドを芝生に変えて、たくさんの人が憩いの場として利用できるようにする社会実験を実施しています。

整備された人が中心の道路
整備された人が中心の道路

3の『生活・居住』は、神戸で生産されたものを買ったり、食べたりできる場を都心で提供する「ファーマーズマーケット」の開催など、そういうイベントで生活の質を上げて、人とのつながりも広げていくような仕組みを作ることが例に挙げられます。

4の『産業』は人が集まりやすい場所にするためには働く場所もなくてはいけません。スタートアップ支援など、新しいアイデア、可能性を持つ人たちが、神戸で起業し、産業を発展させて新たな価値が創造されるまちにしていこうといった取り組みです。

5の『観光・文化』。神戸と言えば観光ですが、その魅力のひとつが夜景でもあるので「夜間景観の整備」は現在取り組み中の事業です。また訪れる人が居心地よく過ごせ「やっぱり神戸はいいよね」と言ってもらえるような便利なインフォメーションセンターや明るく美しい玄関口の整備を進めていく構想です。文化の部分に関しては「ガストロポリス(食の都)」として、神戸牛や世界に誇る腕利きシェフ・パティシエの生み出す神戸の食文化を発信していくなど、一部取り組み中のものもあります。神戸の歴史やまち並みに触れ、五感に響く空間や仕組みを作っていこうという取り組みです。

神戸の観光名所のひとつ「ポートタワー」
神戸の観光名所のひとつ「ポートタワー」

6の『防災』は震災の経験で神戸市民の皆様は意識が高いですが、もっと防災の意識を高め、防災インフラを備えていこうという取り組みになります。災害の情報表示や、避難誘導が行える「多言語サインシステム」を街のなかに整備していくことなどが挙げられます。

7の『環境・エネルギー』は環境面では花と緑のネットワークを広げていったりルーフトップパークの整備などです。エネルギー面では水素などのクリーンエネルギーや、神戸に強みのある未利用エネルギーを活用した社会を実現させていこうという構想になります。

8の『交通』は、交通の利便性がいいことは人が集まる場所に必要な条件です。公共交通機関を誰もが分かりやすく使える環境を整備し、歩く人が中心のまちへという取り組みです。他都市から発着する中長距離バスをターミナルとして1ヶ所に集約したり、「ゾーン内均一料金制度」で気軽に回遊できるまちにしていきたいと考えています。

「三宮クロススクエア」のイメージ
「三宮クロススクエア」のイメージ

――大きな取り組みのひとつとして「三宮クロススクエア」というものも掲げられていますが、概要を教えていただけますか。

菅原さん:三宮にはJR、阪急、阪神、ポートライナー、市営地下鉄の山手線と海岸線の6つの駅が、地下から3階まで階層がすべてバラバラになっています。これが非常に分かりにくいということで、この6つの駅を人が自由に行き来できる、ひとつの大きな空間として再整備する構想です。6つの駅があたかもひとつの大きな駅であるかのような空間を作ろうとしています。その核となるのが「三宮クロススクエア」で、駅前の交差点を人と公共交通を優先させた安全な広場空間にしようとするものです。

これから羽ばたく 宇宙船“神戸号”

神戸市役所本庁舎
神戸市役所本庁舎

――生活拠点としての神戸の魅力を教えていただけますか?

平井さん:まず、神戸で仕事をしながら神戸に居住することもできる、仕事と生活がひとつの空間で充実して行えるというのは大きな魅力だと考えています。三宮近郊の内部アクセスもいいですが、新幹線や空港などビジネスでの交通の便もいいという部分もアドバンテージのひとつだと思います。港もあります。海・空・列車と全部が至近距離ですね。また、山と海の両方が近くにあるという自然環境のなかで、山登りやマリンスポーツなども気軽に近場で楽しむことができるのも魅力かなと思います。

――環境面についてはいかがでしょうか?

平井さん:東京から神戸に移り住まれた方からよく聞くのは、東京と比較すると夏は程よく風が吹いて涼しく、冬には適度に温暖だということですね。これは先程も出ましたが、山と海が近くにある影響もあると思います。神戸の北区・西区というエリアは、住宅街も整備されていますが、古くから県内でも有数の農産地域として農業が盛んな場所ですので、農業をしたいとか、そういう自然豊かな所で暮らしたいという方には良い環境がそろっているかなと思います。兵庫・長田といったエリアも最近になって再び注目を集めつつあるエリアになっています。震災以降には特に高齢化が進んでいた地域ですが、下町の魅力を活かし、若い方が空き家などを利用してカフェなど新しいお店の営業などを始められるという面白い流れが生まれつつあります。

北野異人館街の「風見鶏の館」
北野異人館街の「風見鶏の館」

――そのほか、神戸でしか見ないような特徴的なものなどがあれば教えてください。

平井さん:中央区に限って言えば住人の約1/11の人が外国人であるというのも、港町として150年間の歴史がある神戸ならではですね。またそうして外国人の方も多いので、異文化に抵抗がない、寛容な人が多いと思います。北野などはまさにそういう文化が育んできた街だと感じます。洋菓子やパンの消費も盛んで、老舗のお店も多いですね。珈琲や紅茶に関しても同様です。日本酒などは灘のお酒が古くからの名産であったりしますので、神戸と言ったら舶来物というものだけでなく、食に関しても地の農作物・水産物なども含めて本当にバラエティーに富んでいます。香港などでは神戸産のフルーツが流行っていますので、グローバルな食に関してのPRも積極的に行っています。

――最後になりますが、「これまでの神戸と、これからの神戸」ということでなにか一言お願いしたいと思います。

菅原さん:最初に申しましたように、神戸は震災の影響もあって、大阪・京都・姫路など他の都市の駅前が大きく変わっている中で神戸だけが遅れをとっていたわけです。ですが、逆にそれらの先例から学び、なおかつ人を中心にした駅前構想という、日本ではまだどの都市でも手掛けたことのない新しい都市空間を築き上げようとしています。その“人を中心にした心地良いまち”というのが未来に向かっての新しい神戸の姿となるように頑張っていきたいと考えています。

人が主役になれる街づくりを進める「神戸市役所住宅都市局・企画調整局」
人が主役になれる街づくりを進める「神戸市役所住宅都市局・企画調整局」

神戸市役所

住宅都市局 計画部 都心三宮整備課 都心企画係長 菅原真也さん
企画調整局 政策企画部 調整課 都市プロモーション担当係長 平井美知子さん
所在地:神戸市中央区加納町6-5-1
URL:http://www.city.kobe.lg.jp/
※この情報は2017(平成29)年2月時点のものです。