園長 阿部能光さんインタビュー

少子高齢化に逆行!井吹台ならではの教育で注目と信頼を集める「いぶき幼稚園」

神戸市西区の丘陵地帯に整備された西神ニュータウンのなかで「西神南ニュータウン」と呼ばれる一角に位置する井吹台。1993(平成5)年にオープンしたこの井吹台の街には、最近まで日本一のマンモス小学校だった「井吹東小学校」も存在する。少子高齢社会となったこの時代には珍しいユニークな方針で運営され保護者からの評価も高い施設があるという。今回はその「認定こども園 いぶき幼稚園」の阿部能光(よしてる)園長にお話を伺った。

お話を伺った園長の阿部能光さん
お話を伺った園長の阿部能光さん

若い街に元気な子どもたちの顔が光る

――まず園の概要について教えてください

阿部園長:井吹台の街は1993(平成5)年に、この井吹台東町から街開きされました。それと同時に、「井吹東小学校」と「井吹台中学校」「いぶき幼稚園」の3つの施設が整備され、今年で25年目になります。当園の現在の園児数は460名です。
教育・保育の理念としては「強い心」「丈夫な体」「やさしい気持ち」を育てることとして掲げていますが、具体的にもう少し掘り下げますと、「人とのかかわりを大切にする」、「遊びを通した学び」、「子どもの主体的な育ちや学びを引き出し、豊かな環境を構成する」、「生きる力の基礎となる自己肯定感を養う」、「家庭および地域における幼児期の教育の支援をする」という、いま申し上げた部分に力を入れて取り組んでいます。

「いぶき幼稚園」の園舎と園庭
「いぶき幼稚園」の園舎と園庭

――非常にたくさんの子どもがいるのですね

阿部園長:それでもピーク時よりは少し減っているのです。2003(平成15)年に、ニュータウン開発当初には都市計画になかった井吹台北町エリアがオープンしたことで、それまで330人の園児数が520人まで増えたことがありました。「井吹東小学校」と「井吹台中学校は」は全国トップクラスのマンモス校になり、井吹台の子どもの数は少子高齢化の流れの全く逆になった珍しい場所ですね。

――広い公園などがたくさんあって見晴らしや空気もいい場所ですが、子どもが伸び伸びと過ごせそうな環境ですね

阿部園長:この井吹台の街は25年経っていますが、それでも街としては若い街ですし、環境は本当に良いと思っています。

ユニークというよりは、むしろ正統派、方針は昭和の子育て社会の現代版リメーク

――そんな街のなかにある「いぶき幼稚園」の特色についてお聞きしたいのですが、園ならではの取り組みや活動はありますか?。

阿部園長:当園の特色を一言でいうと「バランス重視」ということになります。バランスというのは、子どもの時に必要な体験をバランスよく体験させてあげる、身に着けさせるということです。現代では社会情勢や経済的事情などで共働きが増えたり、かつての昭和の家庭の様子とは様々な部分で異なるところがあります。

園庭で遊ぶ子どもたち
園庭で遊ぶ子どもたち

そういうわけで、かつて家庭で当たり前にしていたことができなくなったり、逆に昔は幼稚園で行っていたことでも、必要がなくなっていることなども多くあります。そういう部分をうまくバランスをとって子どもに体験させてあげるということです。

――例えば幼稚園でやらなくてもいいこととはどんなことがありますか?

阿部園長:文字の読み書きはもう幼稚園で行いません。これは科学的にも検証結果が出ていて幼稚園で文字の読み書きを教え込むのは害にはなれど、得にはならないと認識されています。その理由も正にバランスなわけですが、現在では各家庭に当たり前に本やDVDなどの豊富なメディアが揃っていて幼稚園で文字の読み書きを覚えなくても家庭でできてしまう場合も多いのです。
そして、子どもたちは家で閉じこもってDVDなどを見ている時間が長く、親子の会話も少なくなってしまう場合もあります。もちろん昔に比べて他の子どもと触れ合う機会も少なくなっています。まさに子どもを知らない子どもなわけで、そんな子どもに幼稚園に出てきてまで、じっとして学習をさせる時間を割いても、もったいないのです。そんなことよりも積極的に言葉を交わす、体を動かす、もっと言えば他の子どもと喧嘩をさせるという体験をさせてあげるべきだと思っています。

クラスでの様子
クラスでの様子

――なるほど、おっしゃられることはよく理解できます。ちょっと心配になるのは、例えば、今お話のなかで出た喧嘩などは親御さんからのクレームになったりしませんか?

阿部園長:ないわけではないです。説明会の時にもお話することなんですが「なぜ昔、あたりまえに雷おやじが街にいたのか」「子どもたちだけで喧嘩して仲直りして、人間関係の力を育むことができていたのか」ということなんです。それができていたのは、昔は子どもは地域共同体のなかでみんなで育てるという意識があったからなんです。親御さんどうしで仲が良かったというベースがあったからできていたことなんですね。
今は子育ての孤立化が進んで親御さんたちどうしが全く見ず知らずになってしまい、園のなかでトラブルが起こると「園の管理下での出来事」というように誰かに責任を求める環境に変わってしまっています。そういう環境になると子どもも大人もピリピリしはじめて、昔のように子どもたちだけで自由に遊びまわって人間関係を育むということが、大人の事情によって消されていってしまいます。ですので当園としては「喧嘩はやらせます」と言っていますし、「どんどんママ友を作っていってください」とも言っています。逆にそれがしんどいと感じるのであれば当園には来ないでくださいとはっきり宣言しています。

――子育て支援の取り組みについてお話をうかがわせてください。

親子で参加し交流を深めている
親子で参加し交流を深めている

阿部園長:先程の話とつながってくるのですが、今日、行っている子どもとお母さんが一緒のふれあい交流も特に力を入れている活動のひとつです。井吹台は全戸が全く新しいニュータウンで、ご近所さんであってもみんな知らない人どうしということから、子どもどうしのつながりということも力を入れておりますが、ご近所さまどうしの繋がりができやすいような機会をたくさん作っています。
お母さんの集いなどを募集すると300組くらいの応募があります。さすがに300組は難しいので100組くらいに絞って自己紹介ゲームとかいろんなことを行っています。地域家庭でできないことを園がサポートしているというイメージです。

取材当日も多くの親子が参加するイベントが行われ賑わっていた
取材当日も多くの親子が参加するイベントが行われ賑わっていた

――阿部園長や先生方が園児とかかわる上で大事にされていることについて教えてください。

阿部園長:子どもたちに自主的に考えを身に着けさせると同時に窮屈にさせないということです。親御さんたちの「保護者」という立場と、我々のような「保育のプロ」としての立場上の違いですが、例えば親御さんは子どもが健康に育ってほしいと思って「魚を食べなさい」と言いますよね。
でも我々は「ちょっと聞いたんだけど、魚を食べた方が体にいいらしいよ」と言うわけです。テーブルの上に乗っている子どもがいると「降りなさい」と親御さんは言いますが、我々は「そこって乗っていいところだったかな?」と問いかけるようにするのです。そうすることによって子どもたちには自分の今の状況を考えてどうするべきかを考える力もついてくるし、頭から「いけません」と禁止されるよりも窮屈ではなくなるのです。現代のように一人っ子が多かったり、他人と触れ合う機会は少ないけど、長い時間を管理環境下で過ごす子どもにとっての、ちょっとした自由のはけ口にもつながります。

――阿部園長が「この園っていいな」と思うのはどんなところですか。

阿部園長:先生どうしが仲が良いことですね。在園児のお母さんもここで働いている人、先生をしている人がいます。園に自分の子どもを預けていただいて当園のファンになって働いていただいている人も多いですから、そういうファミリー感はなかなかだと思います。

――先程ちょっと賑やかそうな外国人の男性を見かけたのですが英語の先生なのでしょうか?

阿部園長:実際にめちゃくちゃ賑やかなオーストラリア人のシェイン先生です。(笑)

自称クレイジーボーイのシェイン先生
自称クレイジーボーイのシェイン先生

――英語教育には力をいれておられるのでしょうか?

阿部園長:力を入れているというよりは、目の色が違う人、皮膚の色が違う、話す言葉が違う人とも一緒におもいきり楽しく遊べるんだという原体験をしておけば、小学校での義務教育で英語を学ぶことになっても「ああ、シェインと遊んでいたアレね」となんの抵抗もなく入っていけると思うんです。異文化にも偏見なく理解ができる下地にもなると思いますから、英語教育に力を入れているというよりは、考え方の柔軟性を持たせるという部分に重きを置いています。

人と街とつながる力 それが子どもたちへの贈り物

――地域住民の方との交流やかかわりのエピソードなどあれば教えてください。

綺麗に整備された街並み
綺麗に整備された街並み

阿部園長:まっさらなニュータウンとして街ができた井吹台なんですが、これだけ子どもの数も多いエリアですから当園の子育て支援の行事以外でも積極的に何かに関わろうとしておられる方が多いなという印象はあります。数のスケールメリットといいますか、なにか最初のとっかかりさえあれば、たくさんの人とつながっていけるのではないかなと思っています。幼稚園や小学校時代からの幼なじみだったのが、今はお父さん・お母さんになって集まってバーベキューをしているなんて世代も出てきていますよ。

――この街や地域の子育て環境としての魅力はどんなところでしょうか。

阿部園長:繰り返しになってしまいますが、この井吹台には子どもの数がめちゃくちゃ多いというところですね。人間というのは1人では生きていけなくて、大勢のなかで多様性に揉まれながら生きていくことが成長にもつながるわけですから、少子化の時代に、この環境に身を置けることは本当に大きなメリットになると思いますし、街にも今までよりももっと明るい未来を感じています。

いぶき幼稚園
いぶき幼稚園

認定こども園 いぶき幼稚園

園長 阿部能光 先生
所在地 :兵庫県神戸市西区井吹台東町4-19
電話番号:078-997-0831
URL:http://ibuki.genki-123.ed.jp/
※この情報は2018(平成30)年1月時点のものです。