「子育てしやすい街」関西1位の神戸市の多様な取り組みにせまります

神戸市 こども家庭局こども未来課 課長の長尾 里津子さん(右)と三方 咲紀さん(左)
神戸市 こども家庭局こども未来課 課長の長尾 里津子さん(右)と三方 咲紀さん(左)

日経BPが発表した「共働きで子育てしやすい街ランキング2023」において関西1位を獲得した神戸市では、近年、子育て環境の整備に力を入れています。妊娠・出産から高校卒業までのライフステージに応じた切れ目のない支援を提供しており、細やかなニーズに応じた多様なサポートを行っています。今回、神戸市 こども家庭局こども未来課を訪ね、課長の長尾 里津子さんと三方 咲紀さんから、神戸市における子育て支援の具体的な内容や、その背景にある思いについてお話を伺いました。

もっと⼦育てしやすい街に向けて取り組む神戸市

ライフステージに合わせた子育て支援内容
ライフステージに合わせた子育て支援内容

――まずは、神戸市における子育て支援の概要と現在の重点取り組みについて教えてください。

長尾さん:神戸市では、子育て支援の総合的なプランとして、『神戸っ子すこやかプラン』というものを掲げています。このプランは、妊娠・出産から子どもの成長過程に応じて、切れ目のない支援を提供することを目指しており、子育て世帯が安心して暮らせる環境を提供し続けるための重要な施策です。2024(令和6)年度には、子育て支援のさらなる充実を図るために、新たな施策を拡充しました。その1つが2024(令和6)年秋頃に開始予定の『こべっこウェルカム定期便』です。これは、2024(令和6)年4月以降に生まれた赤ちゃんを対象に、誕生を祝うプレゼント1万円相当とおむつやミルク等の育児用品(3,000円相当×9ヵ月の計10回)を定期的にお届けするもので、育児に役立つ実用的なアイテムがそろっています。また、配達時に、配達員による声かけ・子育て支援情報の提供など見守りサポートをしていきます。

従来の児童館をさらに利用しやすくするために公募で愛称をつけた『こどもっとひろば』もその1つです。市内に120館ある児童館は、0歳から18歳までの子どもたちが利用できる施設として、乳幼児向けのプログラムや学童保育、中高生タイムなど、多岐にわたるサービスを提供しています。2024(令和6)年度からは全館に「子育てチーフアドバイザー」を配置し、開館中、毎日乳幼児向けプログラムを実施、育児に関する相談や支援を強化しています。例えば「最近、子どもがよく泣くんだけど……」や「ごはんを座って食べてくれない……」といった日常的な相談が気軽にできます。また、初めて児童館を訪れる0歳のお子さんがいらっしゃる家族には、ランチBOXやミニサーモボトルなどの初めてのおでかけにぴったりなグッズがプレゼントされます。

さらに、高校生世帯を支援するための『高校生等通学定期券補助』も2024(令和6)年9月から拡充されます。この制度では、神戸市内の高校等に通う市内在住の学生の通学定期代を全額補助(無料化)します。所得制限はなく、誰でも利用できるため、経済的負担を軽減し、高校生が希望する学校に通いやすくなります。神戸市の広い学区内での選択肢が広がり、お子さんの学びの機会を支える大きな一歩になると思います。

0歳の間に初めて児童館を訪れるともらえる『はじめておでかけギフト』
0歳の間に初めて児童館を訪れるともらえる『はじめておでかけギフト』

政令指定都市の中でも最高レベルの子育て支援

――神戸市では、子育てをサポートする施設が充実しているとお聞きしました。先ほどお話しいただいた以外で、子育てサポート施設を具体的に教えてください。

長尾さん:神戸市では保育所や認定こども園の整備を進め、3年前から待機児童はゼロになっています。また、保育士のサポート充実などにより、「保育の質」は日経が公開したランキングで全国1位の評価を受けました。このように、共働き世帯やひとり親家庭でも安心して子どもを預けられる環境が整っています。また、病児保育の受け入れ施設、市内22カ所、定員150名をさらに拡充予定です。医療的ケアが必要なお子さんの受け入れも21施設まで拡充しました。これらの施設では、看護師を配置するなどし、痰の吸引といった日常生活を営むために必要な医療的ケアを提供するとともに、お子さんの状況に応じた保育ができるよう受入体制を整えています。学童保育の施設数も拡充し、希望するすべてのお子さんが学童保育を利用できる環境を整え、待機児童はゼロになっています。2024(令和6)年からは夏休み期間の受け入れも順次実施していきます。これだけ施設が充実しているのは、政令指定都市でもトップクラスです。

『あすてっぷコワーキング』の内観
『あすてっぷコワーキング』の内観

親子で利用できる『あすてっぷコワーキング』は、無料の一時保育付きコワーキングスペースとして、子育てと仕事の両立を支援しています。中央区にあるこの施設では、子どもを預けて安心して仕事ができる環境が整っていて人気が高いため、2024(令和6)年8月に市内2ヵ所目となる子連れに優しいコワーキング施設が西区にオープンする予定です。また、雨の日にも困らない無料の遊び場が市内に多くあります。例えば室内の大型遊具で思いっきり体を動かせる『こべっこランド』や主に2歳児までの子どもとその保護者が区役所内でふらっと立ち寄れる『おやこふらっとひろば』、未就学児とその保護者が遊べる『こべっこあそびひろば』などです。2024(令和6)年8月には名谷に『おやこふらっとひろば』が新しくオープンします。

また神戸市では、『KOBE公園プロジェクト』や『バスケットゴール倍増プラン』などを通じて、公園の充実にも力を入れています。公園でボール遊びができる環境整備を行い、バスケットゴールを市内の公園に倍増させる計画です。これにより、子どもたちが安全に体を動かし、遊べる場所が増えています。

こうした取り組みを通じて、神戸市は子育て世帯が安心して暮らせる環境を提供し続けています。子どもたちの成長を支える充実したサポート施設がそろっている神戸市は、子育てをする上で非常に魅力的な場所になっていると思います。

『こべっこランド』の外観
『こべっこランド』の外観

学びや楽しみを得られる制度も充実

――小学生や中学生が利用できる制度について教えてください。

長尾さん:小学生や中学生が利用できる制度も充実しており、子どもたちが神戸の芸術や文化に親しみやすい環境を提供しています。まず、市内の全小中学生を対象に『のびのびパスポート』を発行しています。このパスポートを持っていると、市内の美術館や博物館、動物園など30ヵ所以上の施設が無料で利用できます。気軽に教育・文化施設を訪れ、芸術や自然に触れることで様々な体験をして いただければと思っています。例えば、神戸市立博物館やバンドー神戸青少年科学館などの施設を無料で利用できるため、休日などに訪れる学生が多くいます。

また移動のサポートとして、『エコファミリー制度』では、土・日・祝日に大人が市バスや市営地下鉄を利用する際に、小学生以下の子ども2人までが無料で乗車できます。さらに、2024(令和6)年10月からは平日も無料となります。『海岸線中学生以下フリーパス』では、中学生以下の子どもたちは市営地下鉄海岸線を無料で利用できます。

2024(令和6)年4月からスタートした『駐輪場親子おでかけサポート制度』もあります。これは、土・日・祝日に親子で外出する際に、市内の指定された駐輪場を無料で利用できる制度です。自転車での移動が多い家庭にとって、駐輪場の費用を気にせずに利用できるのは大変便利です。これらの制度を通じて、神戸市は子どもたちがより自由に、そして積極的に街を探索し、いろいろな体験をしていただけるようサポートしています。

「神戸市はさまざまな子育て支援があるのですが、多すぎて伝わりづらいのが難点」と話す長尾さん
「神戸市はさまざまな子育て支援があるのですが、多すぎて伝わりづらいのが難点」と話す長尾さん

――神戸市はなぜ、ここまで子育て環境を充実することができたのでしょうか?

長尾さん:子育て中の方々の声を聞いて、その声を施策として反映してきたからだと思います。神戸市には、小児科医や保健師、保育士、心理職員など、子どもや子育てに関する専門職がいて、普段から保護者や子どもの相談に対応している職員が多くいます。そうした中でいただいた声などをもとに、みんなで議論して、実際の施策として活かしています。

子育て情報を一元化!子育ての不安も解消

子育て応援サイト『こどもっとKOBE』
子育て応援サイト『こどもっとKOBE』

――たくさんの子育て施策がある神戸市ですが、情報はどこで調べればよいでしょうか?

長尾さん:神戸市では、子育てに関する情報を一元的に提供するために、子育て応援サイト『こどもっとKOBE』を運営しています。このサイトは、子育てに関する情報を手軽に検索できるようにしたり、実際の制度の雰囲気をお伝えする工夫をしています。例えば、近くの児童館や保育所を地図から探すことができ、各施設のスタッフの想いや利用者の声を読みものとして充実させています。

さらに、『こどもっとKOBE』では、子育てに役立つコラムや専門家のアドバイスを掲載しており、育児の悩みや疑問を解消するための情報が豊富にそろっています。サイトの開設背景には、育児中の保護者が必要な情報を迅速かつ簡単に入手できるようにしたいという思いがあります。2023(令和5)年11月にリニューアルしたこのサイトは、スマートフォンからもアクセスしやすく、忙しい親御さんにとって非常に便利なツールとなっています。実際に利用者からは、「育児情報がまとまっていて助かる」、「地域の施設がすぐに見つかるので便利」といった好評の声が寄せられています。また、実際に神戸で子育てしている方に、Instagramで情報発信をしていただいています。「子連れで安心できるカフェがあるよ」や「須磨シーワールドに行ってきたよ」とか、子育てに役立つ情報が満載なので、ぜひフォローしてみてください。

近くで感じる街の魅力

『おやこふらっとひろば垂水』の内観
『おやこふらっとひろば垂水』の内観

――みずき台の方が利用しやすいおすすめスポットがあれば教えてください。

長尾さん:「垂水」駅と「名谷」駅では『リノベーション・神戸』という取り組みをしていまして、駅の周辺を魅力化しているところです。「レバンテ垂水」という商業施設内には、『垂水児童館・おやこふらっとひろば垂水』がオープンしました。また名谷にも2024(令和6)年8月に『おやこふらっとひろば名谷』が設置される予定です。どちらも商業や行政、文化・子育てなど多方面にわたる整備拡充を目指しているので、新しい街として期待できます。どちらもみずき台からはアクセスしやすいのでおすすめですよ。

――最後に、読者に一言メッセージをお願いします。

長尾さん:街全体で「子育てしやすい街になろう」という想いを『こどもっとKOBE』のロゴに込めました。「子育てに、笑顔を、もっともっと」と想いで頑張っていますので、ぜひ一度お越しいただき、神戸の街の魅力を感じていただければと思います。

三方さん:神戸市は、子どもと一緒に行くと銭湯が無料になるなど、いろんな場面で使える制度が充実しています。特定の人や特定のスポットが優遇されるのでなく、神戸市に住んでいる、あらゆる人が使えるさまざま施策が用意されているので、子育て世代の皆さんに楽しんでいただけると嬉しいです。

「誰一人取り残すことのない子育て施策が、神戸市の魅力」と話す三方さん
「誰一人取り残すことのない子育て施策が、神戸市の魅力」と話す三方さん

神戸市 こども家庭局こども未来課 課長 長尾 里津子さん(右)、三方 咲紀さん(左)
神戸市 こども家庭局こども未来課 課長 長尾 里津子さん(右)、三方 咲紀さん(左)

神戸市役所

神戸市 こども家庭局こども未来課
課長 長尾 里津子さん
三方 咲紀さん
所在地:兵庫県神戸市中央区加納町6-5-1
電話番号:078-331-8181
URL:https://www.city.kobe.lg.jp/
※この情報は2024(令和6)年6月時点のものです。